宝塚のルパン三世が予想以上に面白かったので熱烈に語りたい、薦めたい、また観たい

先週の土曜日、1月24日に宝塚観てきました。今年初。というか結構久しぶり。

 

演目はルパン三世王妃の首飾りを追え!ー/ファンシー・ガイ

これがまたすっごく良かった!!

いや、これは久々に、かなりの良作というか、宝塚ファンとしてでなく、一般人の宝塚全く知らない人間だったとしてもかなりオススメです。関西では、2月2日までなのが惜しい〜。東京公演が控えているのですが、それに行ける可能性がある関東在住の人がかなり羨ましい。

ぜひ、ぜひ、ぜひ、観に行けるなら、この宝塚ルパンを観て欲しい。

 

いや、わかりますよ。「宝塚がルパン?は?」ってなるの。しかも画像検索とかして出てきたの見て「何これ全然違うやん」って、むしろきもい、とか思う人がいるのもわかりますよ。拒否反応がでるのも想定の範囲内。その上で、むしろ、その気持ちを持ったままでイイから観に行ってほしい。

 

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 (劇場に飾ってあるお花。よく見るとルパンカラー)

まずね、宝塚とルパンというかなり異色の、それこそ下手したらイロモノ劇で安っぽく大失敗し兼ねない材料なんですけど。かなーりうまく融合されていて、ちゃんと宝塚であり、ちゃんとルパンである最高のエンターテイメント作品になってます。本当にこの作品を作り上げた小柳奈穂子さん(脚本・演出)を褒めたい。褒めちぎりたい。

 

何が良かったかというと兎に角「宝塚」であり「ルパン三世」であること。この相反する二つのものがあんなに見事に一体化するなんて。まずはそこ!!というかそこ!!

※以下、舞台演出やストーリーについて多少ネタバレあり。

 

 

 

【ストーリーについて】いや、本当にうまかった。最高。小柳菜穂子万歳。そして振付師さんグッショブ。

まず上手いなと思ったのは、ストーリー展開。舞台は現代のヴェルサイユ宮殿、ルパンがマリー・アントワネットの首飾りを盗もうとするところから始まるんですが、そこからヴェルサイユの時代にタイムスリップ。本物のマリー・アントワネットがいる時代、1785年に飛びます。ここが上手い〜。宝塚の伝家の宝刀、ベルサイユのばら要素が強くなるので宝塚要素はここで合格、アニメ原作だからこういう奇想天外な話も全然自然に見える。そして、そこから1793年(マリー・アントワネット処刑の年)に飛ぶという、3つの時代を行き来する物語。しかも3つの時代をテンポ良く進んでいくから、話に幅は持ちつつも間延びしない。

そして、この1785年から1793年に移る際、銭形のとっつぁんだけ1785年に取り残されるんですが、そこから8年間経っていく瞬間がすごい。一瞬なんですけど、この1785年から8年間の激動の時代の流れに、銭形のとっつぁんが身を委ねていく様が踊りでとても自然に且つダイナミックに表されていて、見どころのひとつだと思います。ほんと。

しかも登場人物がルパン一味はもとより、不二子ちゃん、とっつぁん、マリー・アントワネット錬金術士のカリオストロ、おまけにヴェルサイユの人に、カリオストロの周辺の人に民衆、とそれぞれ本当に個々がしっかりと立つ舞台でした。ちゃんとルパンとマリーアントワネットが主役なんだけど、周りの脇役が本当に存在感がしっかりあって、層の厚い舞台になってた。

 

あとね、歴史上の人物が実は・・・みたいな展開が好きな人にもオススメ。これ、漫画というかアニメだからこその話だけど、とても面白くていい。

 

っていうかね、分かっちゃいるけど、ルパンのテーマがかかるとテンションあがる。生のオーケストラでルパン三世のテーマが聴けるのも見どころのひとつ。

 

【ルパンについて】

かっこいい。とにかく、ちゃんとルパンでした。なんかすごく自然。宝塚の人がルパンやるのってどうなの?とかファンとして不安(洒落じゃないよ)を抱えつつ行った部分はあったんですが、安心した。ちゃんとルパンだった。というか、ルパンだった。実写映画は見てないからなんとも言えないんだけど、実写として成功してた。「やっぱりルパンかっこいい!」という感想が自然と出てくるほど、ルパン。そしてこの舞台で学んだのは2.5枚目こそ至高ということ。

 

処刑される運命にあるマリー・アントワネットにルパンはどこまでも優しい〜。そしてシリアスになりがちなところもシリアスじゃないから救われる。この感じは宇宙兄弟のむっちゃんに通じるところもあるんだけど、暗い空気になりがちなところも、宇宙兄弟で言えばむっちゃんだからこそ救われるというか、今回もルパンだからこそ、悲しさが心に届く前にその場所からマリー・アントワネット共々観客をすくい上げてくれる存在。ルパン、かっこいい〜。

あと、体型が漫画です。足が長い。しかも細い。とくに銭形警部は漫画そのもの。動きもコミカルだから長い足が映えてかなり漫画チック。笑

 

ルパン三世のテーマをルパンが歌うところがあるんですけど、これがまたそんなに上手くないんですよ!!笑 でもそこがいい!!上手くなくたっていいんですよ。だって彼(彼女)はルパンだから。

というか今回ルパン三世をやっている雪組の皆さん、あまり歌は得意ではないと思われますが、それでもいいんですよ。だって皆ルパンの登場人物だから。そう思わせるくらい、ルパン三世でした。

 

【ルパンとマリー・アントワネット

これね、二人が大人の男と女でした。精神的に。

マリーは既婚者だし愛しているのはフェルゼンだし、ルパンはもちろんあの性格だし深い恋愛はしないんですが、人間愛というか、でもしっかり男女愛だった。そこがまたうまい。

ルパンの性格もあると思うんですけど、マリーを素敵な子だと思って、救おうとして、マリーもルパンを素敵な人だと思って接してるのがかなり伝わる。ちゃんとお互い異性のマナーを守っているというか、まさに「色」の関係。恋とか愛とかじゃなく「色」。これ江戸時代にはあった関係ですが、男女の絶妙な関係を表した言葉。恋ほど盲目でなく、愛よりも冷めてない。まさにマリーとルパンはそんな感じ。宝塚ではこういう恋愛の形は珍しい。そこがまたレアで見とくべきとこ。

 

というか、舞台演出に関してネタバレしますけど、最後に物語が終わって幕が降りる前はルパン一人なんですよ。で、一人でルパンのテーマ歌って、舞台に背を向けながらチープに描かれた夜の背景へと歩いていくんですけど、その演出がまたアニメチックでルパンで、たまらん。しかもルパンの最後のひと動きがまた・・・。これは自分の目で見てほしいので言いませんが、「うーん、うまい」となる。

 

この頃、歌舞伎観に行った時の「お祭り男」という演目でも思ったんですが、私は観客と舞台が繋がる瞬間というのがたまらなく好きだなぁということ。

「お祭り男」は、怪我から復帰した役者が演じるので、舞台上での主演、お祭り男の歌舞伎役者に向かって「待ってました!」と客席から声がかかるんです。それに「待ってくれてたとは有難てぇ」と役者が応えることでやっと舞台が本当に始まる。

観客の「待ってました」あってこそ、そしてそれに役者が応えないと始まらない。この舞台があり、観客が反応し、それに役者が応えるという、舞台と客席の境界が、一瞬だけど消える瞬間、それがとてもいい。

今回のルパン三世も然り。アドリブがほぼ毎日あるようですが、私が観に行った時はVISAカードと宝塚友の会の貸切公演。なのでVISAカード、および友の会に関するアドリブの連発。この観客、および企業に向けたサービスもまた楽しいからお客さんも湧く。そこで舞台という空間と、観客のいる現実の空間が混じり合う感じがたまらん。

観客あっての舞台だなと、客の立場でおこがましいですが思いました。

 

お客さんあっての、というのは終演後にも関係します。面白い舞台というのは、幕が下りた時のお客さんのパワーがすごいんですよ。

このルパンも、幕が下りて明かりがついた瞬間、皆が自分の面白かった!という感情を爆発させるように客席がわぁ!っと湧いていました。あの空気もとても好き。その終演後の観客の反応も含めて、舞台は完成するなぁと。素人ながら思いました。 

 

 というか、ルパン三世について、本当によく研究された舞台です。アニメ感を大事にしていて、それは宝塚の人たちがとにかくアニメをよく見て、アニメを舞台の動きや演技に活かそうとしたからだと思います(トーク番組で言ってました)。

また銭形警部の下まつげを再現するために、ちゃんと二枚も下まつげ付けてるらしいです。ただ、アニメの銭形警部は上まつげなくて、それは宝塚的には変なので、一応上まつげも付けてるみたいですが、役者さんも言ってましたが、ここも上まつげ(宝塚)と下まつげ(ルパン三世)のコラボレーション。(無理やり)

 

本当に、メビウスの輪じゃないけど、ルパンと思って観ていたら宝塚だし、かといって宝塚として観ていたらいつの間にかルパンに行き着いてるという、見事な舞台でした。

もちろん宝塚単体としては、宝塚らしくないところが多いし、ルパン単体としてはルパンではないかもしれない。でも、「宝塚のルパン三世」だからこそ、二つが活きているという奇跡の舞台でした。 

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 (劇場の入り口にある公演ポスター。駅で見かけたことがある方も多いと思います。ポスターからは想像しにくいだろうけど、この映ってる方々が舞台で動き出すとルパンの世界に引き込まれます。まじで。観終わってからポスターを見ると感慨深い・・・)

いや、本当に、舞台は生もの。これを今から観れる人幸せだな。見るチャンスが少しでもあるなら、ぜひぜひぜひ観にいってください。

 

ショーについては、男役、娘役共にお披露目公演(この公演がトップとして初公演)なので、初々しい二人のペアダンスが見どころ。もちろん大階段も羽も。しかし、宝塚らしさというのも、ルパン三世の舞台が強すぎて、ショーはいまいち覚えていません。すみません。

 

舞台は日々進化していくもの。東京でさらなるパワーアップをしているだろう宝塚ルパン三世。うーん、関東住みの人が今はとても羨ましい〜!!!