解散したからこそ聴いてほしい、マイケミカルロマンスというバンド
マイケミカルロマンス(My Chemical Romace)という名前を、聴いたことはありませんか?
聴いたことない、という人もこの曲なら知っているかも。
My Chemical Romance - "Welcome to the Black ...
携帯の着うたCMでも使われていたので、サビの「きゃーりおーん、きゃーりおーん♫」というフレーズは聴いたことがある人もいるはず。
彼らはアメリカのニュージャージー出身のマイケミカルロマンス(通称:マイケミ)というバンドで、2013年の3月既に解散しています。
最近、高校時代によく聴いていた3枚目のアルバム『The Black Parade』を通勤中に聴いて、改めてこのアルバムの素晴らしさ、そしてマイケミカルロマンスというバンドの物語性がとても興味深いことに気がつきました。
この歳になってしっかり聴きこむと、当時には気づかずにいたことなど、色々と分かることが出てきました。歴史に残る一枚、というわけではないかもしれないけれど、一つの作品として、かなりの良作ではないのだろうかと。皆にも聴いてほしいのですが、ただ聴くだけでは好みもあるし、マイケミは割とエモ、ビジュアル系やゴス系なところがあるので受け付けない人もいると思います。でもそういう面じゃなく、マイケミカルロマンスというバンド自体がどういうものかを知って、聴いてみて欲しいんです!!!!
大学時代、洋楽ロックから少し離れていた時代に、マイケミはいつの間にか解散してしまっていたのですが…高校時代は大好きで、3枚目のアルバム、『The Black Parade』はかなり聴いていました。
- アーティスト: My Chemical Romance
- 出版社/メーカー: Wea
- 発売日: 2006/10/24
- メディア: CD
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自分の好きなものに全力投球の高校生らしく、洋楽ロックにどハマりして、マイケミを大好きだということになんの躊躇もなく、おまけにマイケミのこの『The Black Parade』のシングルカットはCMでも流れていたので、ほぼ毎日ヘビロテ。
その時は聴きやすいしキャッチーなメロディで、さらに思春期のこじらせた感じにぴったりのゴスちっくな衣装に、反抗心むき出しのかっこいいロックバンドということで、本当にかなりお気に入りでした。
(この写真なら見た事ある人もいるかも。みよ、このカッコよさ...)
正直久しぶりに聴いても、次に来る曲が自動的に頭で再生されるくらい。
そういうわけで、久しぶりに聴き返して今思い返してみると、マイケミカルロマンスがこの『The Black Parade』をリリースしたあの時代、つまり2006年が、本当にこのアルバムを出したあの時が、マイケミの最盛期でありマイケミカルロマンスが完成された年だったのです。そして同時に、あそこで一度、彼らのロマンスは終わりを迎えたのだということがわかってきました。そう考えると解散という彼らの選択肢も、ある意味とてもポジティブに捉えられるのです。
大好きだったバンドが解散したのに、そして最盛期を終えたのに何故楽観的になれるのか?そのきっかけはこのボーカルのジェラルドのインタビューでした。
マイ・ケミカル・ロマンスの解散の背景をジェラルド・ウェイが語る (2013/11/30) | 洋楽 ニュース | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト
一部抜粋
『ブラック・パレード』が終わった時点で僕は言いたいことはほぼ言い切っちゃった状態にあって、だから『ブラック・パレード』の後にぼくに唯一残されていた言いたいことは、自分がどれだけ怒ってたかっていうことだけだったんだ。人の対応とか、人がお金で動いていたとか、そういうことでね。これは特にこれまであまり話してないことなんだけど、僕はクリエイティヴな意味で壁にぶつかっちゃって、特に歌詞がまったく書けなくなっちゃってたんだ。
ジェラルド・ウェイ(Gerard・Way)/ボーカル、フロントマン
今見ても、あの時のマイケミは本当に神がかってた。
メンバーの、特にフロントマンのジェラルドの容姿、年齢、コスチュームにアルバムの雰囲気と完成度、全てが揃ってマイケミの、ジェラルドの世界観がガッチリ完成されていました。
ジェラルドは元々黒髪で少しぽっちゃりとしていたのですが、ブラックパレードのときは細身に白髪という出で立ちでした。
それこそ映画『ブレードランナー』に出てきたアンドロイドのごとく、神がかった人工的な美しさがありました。あのブラックパレードのコスチュームも、メンバー全員で着ることでばっちりキマっていました。
そしてジェラルドが言うように、この『The Black Prade』は、ジェラルドの言いたかったこと、彼が人生の中で音楽をしてきた過程において、すべての思いを言い尽くしてしまったんだろうなと思います。アルバムの中の曲の歌詞や、彼のインタビューなどを見ていると、そのことがヒシヒシと伝わってくるのです。
そもそも、ジェラルドがバンドを始めたのきっかけは、9.11があった時。
彼は当時ニューヨークでアニメーターとして働いていました。あの日、通勤のためフェリーで会社へ行く途中、ジェラルドはビルに飛行機が突っ込むのを見たのです。そしてずっと疑問に思っていた自分の生き方に気づき、音楽で生きて行くことを決意します。
そこから初期のドラマーであるマットという友人を誘ってバンド活動を始めたそうです。
こういう、何か人生において衝撃的なことがあったから活動を始めた、という理由はアーティストにはありきたりかもしれませんね。けれど、そこに至るまでにも、彼にはそうなる歴史がありました。例えば、彼が歌うようになったきっかけ、そして最初の仕事でもあった絵を描く仕事、それらは全て彼の大好きなおばあちゃんから教わったことでした。学芸会でピーターパン役をしたことをおばあちゃんが喜んでいたことなどもジェラルドの口から語られています。
ジェラルドはアニメーターという前職や過去の容姿をみて分かるように、結構内気だしナイーブなんですよね。そんなおばあちゃん子の内気な彼が、小さいころから自然と歌を歌っていたこと(おばあちゃんを喜ばせるためという理由も込めて)、成長するにつれ弟と一緒にロックなどを聴くようになったこと(弟はマイキーといってバンドのベース担当です。インタビューでも度々弟と小さい頃の思い出などが語られています)、マイキーがジェラルドをロックのライブなどに連れて行ったことなど、家族がいたからこそ、マイケミのジェラルドが生まれたのです。そうして、ジェラルドは音楽へと進んだのだと思います。
弟がバンドにいるというのが、まずバンドの印象としてとても家族的(ドメスティックといった方がニュアンスとして伝わるでしょうか)で、ジェラルド自身の人生の歴史がバンドの中で既に見られるのです。しかもギターのレイ・トロも幼馴染だし。
そういうことを、ジェラルド・ウェイのすべてを含めて、ある意味マイケミカルロマンスというのはジェラルド・ウェイという人物の人生の歴史の過程にこそあったものだと思うのです。もちろん、そこに弟のマイキー、ギターのレイトロにフランク、抜けてしまったドラムのボブやマットは絶対に欠かせない存在には違いないですよ。
けれど、やはりマイケミカルロマンスに関しては、私はとても私的なバンドだったと思います。私的というのは、彼ら自身に関して。そして特にジェラルド自身に関して。
彼らのアルバムも一枚目〜3枚目までとても個人的な思いがアルバムのコンセプトになっています。ウィキペディアから引用。
なお、それぞれのアルバムのコンセプトは「ひどい失恋」(アイ・ブロウト・ユー・マイ・ブレッツ、ユー・ブロウト・ミー・ユア・ラヴ)、「祖母の死」(スウィート・リベンジ)、「自分の道を生きる決意」(ザ・ブラック・パレード)といった個人的経験が元となっている。それらの経験、困難を乗り越え、フォースアルバムでは「僕らが君たちを救う」(デンジャー・デイズ)としている。
その個人というのは、ジェラルド・ウェイというフロントマン。
ちなみに2枚目のアルバムの一番最初の曲名は「ヘレナ」。
これはジェラルドが小さい頃に呼んでいた祖母の名前です(祖母の本当の名前は「エレナ」)。
My Chemical Romance - Helena (Music Video) HD ...
下記、マイケミ語録をツイートしてくださっている方からお借りしますが。。。
僕らは特定の人に向けて音楽を作っていない。自分たちのために作ってる。その誠実さが、サウンドから感じられるんじゃないかな - レイ・トロ(g)
— マイケミ語録bot (@MCRgoroku_bot) 2015, 2月 26
レイトロが言っているように、彼らは彼ら自身に対して音楽を作っていた。もちろんファンであるキッズに向けてだけど、そのキッズは、キッズであったころの彼らでもあるし、彼らはずっとそのキッズでもあったわけです。
マイケミの音楽は、ジェラルド・ウェイ率いるマイケミカルロマンスの、ジェラルド・ウェイという1人の人間の世界への主張として聴くと、とてもしっくりくるのです。
音楽として、そういう面で彼らの曲を聴くと色々言いたい事がある人はいると思う。
でもマイケミカルロマンスに関しては、そう言った観点よりもっと聴き方が違うのではないでしょうか。音楽として聴くよりも、むしろマイケミカルロマンス自体を、ジェラルド・ウェイという人物を見ることで、より楽しめる、マイケミカルロマンスという物語のようなものだと思うのです。
そういうわけで、マイケミカルロマンスが作り上げた『The Black Parade』、中身を聞くと本当に、ジェラルドのインタビューなどと全てが重なるんですよ。
もちろん、プロデューサーはいるし、ある程度商業的には作られているかもしれない。でもそれを差し置いても、彼らの、ジェラルドという人間の色が本当に濃く出ていて、その色濃さがとてもうまく一作品、ある種の物語として完成してるんですよね。
だけど完成というのは同時に終わりも意味していて、そういう意味では彼らは次が作りづらかったと思います。もはや不可能だったのでしょう。4枚目を作って、解散してしまったけれど、それはマイケミカルロマンスとして仕方のないことだったのかもしれません。
上のインタビューでジェラルドが言うようにすべてを言い尽くしてしまったんだろうなと思います。
ジェラルド・ウェイという人物の言いたかったことを、彼はこのアルバムで語るべきことを全て語ってしまった。あとの語りはその繰り返しにしかならない。
だから、解散というのはある意味マイケミカルロマンスにとっては、必然的なことだったのかもしれません。でもだからこそ、彼らは次のステージへ進むことができたんだと思います。解散したからこそ、彼らのストーリーはまた再開できた。
いつかまた再結成するかもしれない。そんな日も楽しみだし、マイケミカルロマンスという物語、ロマンスを残していってくれた彼らには本当に感謝しています。
マイケミカルロマンスは、ずっとキッズであり続けたし、彼らのバックグランド、語ってきたことを改めて読んでみて、多くのキッズ、そしてキッズであった大人たちへの力強いメッセージとなっていると思います。
解散したからとか、マイケミはエモで痛いとか、そういうことを抜きにして、音楽的にとか、CDバンドだとか、ライブでジェラルドが高いキーを歌えないことだとか、そういうつまらないことに目を向けるのではなく、彼らの物語に目を向けてこの『The Black Parade』を聴いてみてほしい。本当に一種の、小説でもない、映画でもない、朗読CDでもない、だけどマイケミカルロマンスというバンドの、ジェラルド・ウェイという人物の、一人のキッズの物語が溢れています。
かつてティーンエイジャー(10代の若者)だった人にこそ、聴いてほしい。
マイケミカルロマンスの、ジェラルド・ウェイの「自分の道を生きていいんだよ」というメッセージ。
特にこのティーンエイジャーという曲には、マイケミカルロマンスの全てのメッセージが詰まっていると思います。
My Chemical Romance - "Teenagers" [Official ...
歌詞の一部を抜粋して要約すると、
大人たちはティーンエイジャーが怖い、だから君のことを監視して真っ当な人間にしようとしてる
黒い服をきて、凶暴なポーズをとってやれ
彼らは君を見捨てるかもしれない
けれど、僕は違う!
このティーンエイジャーを、「好きなことをして生きる君」に置き換えたら、わかりやすいのではないでしょうか。マイケミカルロマンスは、ティーンエイジャーに人気があった。それは彼らがどこまでも、ティーンエイジャーの味方だからだと思います。
傷つきやすく、一人で悩みがちで、好きなことには全力なティーンエイジャー。可能性にあふれていて、なんでもできる怖いもの知らずの精神。
マイケミカルロマンスが、ジェラルド・ウェイがそうだったからこそ、彼らは、ジェラルドは、マイケミカルロマンスを通してそのことを訴え続けてくれた。
自分に正直に生きるのは難しいけど、そんな私たちを勇気付けてくれるアルバムを、マイケミカルロマンスというバンドを残していってくれて本当にありがとう。
音楽性とか関係ない、こんなにもアルバム、曲、ライブを通して「自分の道を生きたらいいんだ、僕たちはいつでも君の味方だ」というメッセージを残してくれたバンドは珍しい。
どのバンドだって、音楽が好きで伝えたい思いがあるのは知っています。
でも、改めて、マイケミカルロマンスというのは、4枚のアルバムを通して、全力でその想いや物語を伝えてくれたんだと思います。
解散したから、終わりじゃない。
最初のに載せた曲、Black Paradeをもう一度聴いてみてください。
My Chemical Romance - "Welcome to the Black ...
We'll carry on, we'll carry on,
And though you're dead and gone, believe me,
Your memory will carry on, we'll carry on
(ここからお借りしました→Read more: My Chemical Romance - Welcome To The Black Parade Lyrics | MetroLyrics)
僕たちは続いていく、続いていく
君は死んでいなくなってしまったけれど
僕を信じてくれ
君の記憶は続いていく、僕たちが続けていく
マイ・ケミカル・ロマンスは終わった。でも死んでしまうことはない。僕や、メンバー、君たちみんなの中で生きている。そのことはずっとわかってたし、君たちも多分わかってると思う。それはバンド(という形)ではなく、心の中にあるもの(idea)なんだから。 - ジェラルド・ウェイ
— マイケミ語録bot (@MCRgoroku_bot) 2015, 3月 8
解散したからこそ、また改めて一人でも多くの人にマイケミを聴いてほしい。
そして好きなことを大声で好きだと言える勇気を持てない時、マイケミカルロマンスという強い味方がいるということを思い出してほしいです。
- アーティスト: My Chemical Romance
- 出版社/メーカー: Wea
- 発売日: 2006/10/24
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言葉が足りなくて書ききれない!!!またこの記事も少しずつ情報などを足して完成させていきたいと思います。
以上。マイケミ、おすすめ、ジェラルド、超かっこいいよ。
【おまけ】
日本大好きなマイケミ、「串カツ!ニドヅケ、ダメヨ!!」に笑う。
MCR appeared in Japanese TV show - YouTube