英単語DUO 3.0にまつわる、鬼のように怖かった英語の先生の話

 

社会人になって、英語いるなぁってことで 評判の良い英単語帳DUO 3.0を買ったんですよ。結構以前に。

大学受験用に高校生が多く使っているみたいですが、社会人にも結構評判がいいみたいで、Amazonのレビューとか読んでても、「ボブがんばれ」とか「ボブかわいそう」という謎の感想が多くてそれも気になって買いました。

 

読んでみた感想は、「ボブ、落ち着け!」「ボブ、元気出して!」「皆、もっとボブに優しくしたげてよ!」って感じです。いや、本当に。DUO使ったことある人なら共感してくれると思うんですけど。ボブよ。

 

※以下の話は、記録とかなく私の記憶から思い出して書いているので事実とは多少異なる可能性(特に人物の細かい発言など)があることをご了承の上お読み下さい。

 

 

で、DUOを電車とかで読んでるときに、ふと大学の時の英語の先生を思い出したんですよね。すんごく強烈な英語の先生を。すんごい強烈で、あまりに衝撃的だったので授業を受けた初日は何人もの友達に話しました。一緒にその先生の授業を受けた友人も衝撃だったらしく、授業の明くる日にその友人を家に泊めた子が「あの子、家に来た時から夜まで、朝起きてもずっと英語の先生の話してたよ・・・」と疲れた様子で言ってたくらいです。

 

友人とシラバス(授業の説明)を読み込んで決めた授業だったのですが、初日に教室へ入った瞬間、私は教壇の先生をみて「これはやばい・・・」と瞬間的に感じました。スキンヘッドにラガーマンのような身体に白いポロシャツ、むきむきの腕を組んで銀縁眼鏡を掛けた先生は額に青筋を浮かべ、はっきりと後ろに怒りのオーラが見えました。いや、本当に。危険を感じ取った私は、速攻後ろの席へ。

 

ー授業開始ー

チャイムが鳴り終わった瞬間、ドスのきいた声で第一声。

「後ろ座ってるやつ、全員前来い、後ろ4列は今後一切授業でつかわねぇぞ」

教室の空気が一瞬にして凍り、私の頭に相馬灯が。あ、終わった。と思いました。

皆、うつむいて前の席へ。

「全員立て」

軍隊の初日ってこんな感じかな。なんか小学校の魔女裁判こと、終わりの会の吊るし上げを思い出しました。

シラバス読んだやつは手ぇあげろ」

私と友人は恐る恐る手をあげると「そいつらは座れ」と言われ着席。そこから、30分、読んでなかった人々は立たされたままお説教されてました。

怖かった・・・。

怖かった!!!!

皆うつむき、携帯のバイブが鳴れば全員が身をこわばらせる。この時ほど、シラバスを読んでいた過去の自分に最大のグッジョブをあげたかったことはありません。

 

でも考えてみればシラバスを読んでないのに授業を取るっていうのは愚かな行為ですよね。先生が怒ったのも無理ありません。先生の授業を受けたことがあったり、シラバスを読んだりして先生の授業を受けることを希望した子がたくさんいたのに、読んでない人が大量に申し込んで抽選になった結果、その授業を受けたかった子達が抽選漏れして受けれないということが発生したみたいです。その時、読んでなくて立たされていた学生は半分以上いました。そりゃ怒るわ。

 

そんな初日から始まり、とにかく毎回の授業がある意味恐怖でした。携帯を切り忘れては、授業中鳴らないか冷や汗が止まらず、授業にもってこいと言われていたノートを忘れたら生きた心地がしない。むしろ売店で買う。前日にかならずノート入れたか確認。宿題は必死になってやって、万全の準備をして授業へ。毎週そんな感じでした。

今思うと、これが正しい授業の受け方でしたね。 

 

授業内容は結構面白くて、前期はフォレスト・ガンプの映画をセリフ集を手元にみて、学ぶというもの。先生の人生を変えた映画らしく、映画を流しながら解説してくれてました。「ガンプがよぉ〜、走るんだよ」「こんなバカにされててよぉ」「母ちゃんが頑張ってくれてよぉ」「幼馴染がよぉ〜」「いじめっ子がよぉ〜」とひたすら細かく解説してくれてたのに、ガンプのお母さんが、ガンプを普通学校に入れるために校長先生とベットインするシーンはなぜか終始無言。見事にノーコメント。先生、皆もう大学生だから、そんな気まずそうにしなくて大丈夫。そこで鬼のような先生にギャップが見えて面白かったです。

 

まぁ、授業も割と毎回お説教がありました。誰かの携帯のバイブが鳴った時、皆が雷が落ちると身構えたんですが意外と先生怒らず。「さっきもよぉ、授業中に携帯いじってるバカがいてよぉ、怒ったんだけどよ、あれだろ?お前ら繋がってないとダメなんだろ?」といきなりかなりバカにした口調に。ちょうどドコモのCMで「繋がってる」というフレーズが流行っていた時でした。皆、いつものようにうつむく。

「俺にも親友が2人いるけどよ、メールなんかしねぇからな。でも何年ぶりにあっても、親友は親友なんだよ。いつも繋がってなけりゃいけねぇなんてお前らは本当にかわいそうだ。なーにが繋がるだよ」

 

でも、私この時すごく突っ込みたかったんですよね・・・。先生の携帯はその時はまだ珍しいiPhoneで、先生はiPadも持ってて、パソコンはMac...

 

先生、先生がこの教室で一番「繋がってる」やん!!!

 

ここで突っ込める勇気があれば、今頃私はおそらくノーベル賞5個同時受賞するくらいの活躍してたでしょうね。神から火を盗んだプロメテウスも真っ青ですよ。

 

後期の授業は「華麗なるギャツビー」と「長いお別れ」を英語で読む授業でした。まぁ、なぜこの二つかというと村上春樹が訳してるから。先生が村上春樹好きで、日本語訳のある英語の小説を選んだとのことです。私は村上春樹が苦手なので、わざわざアマゾンのマーケットプレイスを使って過去に出てた違う人の訳文を買いました。二冊ともね。もはやそこまでして村上春樹を避ける私に友人も呆れていました。最早ある意味村上春樹への愛だよね。

 

でもこの授業、結構難しかった。なぜかというと毎回「小説を読んでいて気づいたこと」「ここに出てくるこの看板は何を意味しているか」「ギムレットはどういう役割をしてる?」などなどを一人一人当てられて、その場で答えなければいけなかったから。当てられる前に手をあげるほうが、確か授業でのポイント高くもらえたかな?とりあえず自主性もかなり求められました。

でも皆、なかなか答えが出ず。「何が正解なんだ!?」「下手な答えはいえない」と思い授業は割と静かでした。

 

結局、授業を受けている間は「この授業の意味は一体?先生はどこに向かってるんだろ?というか、正解がわからん。先生が何を教えたいのかわからない」という感想でした。英語の文法もしないし、英語で読むとは言っても、日本語訳の小説も読んでOKだから、英語力はそこまでつかない。むしろ国語の授業に近い感じ。

 

テスト前の最後の授業の日に、先生が種明かししてくれました。「この授業、難しかったと思う。でも俺はよぉ、この授業でアメリカの文学の授業を教えたかったんだ。正解なんてねぇんだよ。アメリカ人なんか文学の授業でばんばん恥ずかしがらずに自分の意見好き放題言うんだよ。それでいいんだよ。小説読んで、巨大な目の看板が神の目だとか、主人公の目だとか、誰の目でもないとか、自分の解釈で好きに考えていいんだよ。お前らはさ、高校まで正解があることしか教えられてないだろ。でも文学に正解なんかねぇんだよ。文学を読んだ時、自分がどう思うか考えるか、自分の意見を持つことが一番大事なんだよ。だから俺は本当の文学の授業を受けさして、それを伝えたかったんだよ」

 

先生、そういうことは授業の最初にいって!!!!!と当初は強く思いましたが、先生のおかげで、小説や映画に関してもより自由に読めて、楽しめるようになったと思います。よく出てくるキーアイテムや小説の暗喩表現、途中で出てくる景色や場面、もの、人の態度など、これは一体どういう意味なんだろうと想像を膨らませること、自分の解釈というのを大事にできるようになりました。先生の授業が大学で一番印象に残っています。一番怖かったし、一番真剣に受けたし、一番「考える」ということを直接教えてくれた先生でした。キャラも強烈だし、突っ込みどころもたくさんあったし。

 

一度だけ、私がゼミの発表で不安があるときに先生に相談したことがあります。「どうしたら緊張しませんかね?」と。そしたら先生は「緊張しぃは絶対なおらねぇんだ。緊張は誰でもする。でもな、とにかくちゃんと準備することだ。そしたら緊張はしても不安にはならねぇから。そもそも緊張すんのは準備不足で不安になるからだ。準備すれば緊張はするけどかなり減るんだよ。準備だ準備!!」とのアドバイスが。その言葉を信じ、ゼミ発表の練習を何度もして、準備万端にして、発表はしっかり乗り切れました。ゼミの先生にも褒めてもらえたし、今思うとそれは先生のおかげでしたね。直接話をしたのはその時くらい。でもそれがすごく自分のためになりました。

 

そんな感じで、DUOを勉強してたら先生のことが懐かしくなって、名前検索してみたんですよね。「先生今なにしてるのかなー?」って。

 

そしたら、なぜがDUOが検索結果に。

 

え?

 

え??

 

 

・・・うん。編集のところに先生の名前あるね!!!!

 

先生、すごい教材作ってた人だったんですね。

そういえば授業中何度か「俺もよぉ、アメリカ留学から帰ってきて英語教材とかの編集手伝ったりしてよぉ」って控えめになんか言ってた気がする・・・。

先生、自慢してよかったよ!!!!めっちゃ控えめに言ってたけど!!!!

そりゃ、あの先生が編集に関わってたら、例文が面白いって好評になるわけだと納得。

 

それにしても、意外な形で先生と再会するとは。世間て狭いなぁと思いました。

 

でも先生、だからそういうことは最初に言っといてくださいよ!

 

「うっせー、いくらでも調べられただろ。あとから気づくおめぇが悪いんだよ」と聞こえてくる気がします。笑

ぐうの音も出ないほどの正論。

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でも改めて、学んだことがたくさんあるなぁと思います。いまだに「華麗なるギャツー」と「長いお別れ」の授業で使った洋書も日本語訳の本も持ってるくらい。たまに華麗なるギャツビーは読み返したり。

 

先生、素敵な小説、映画、単語帳、そして文学の読み方を教えてくれてありがとうございました。先生の現在のご活動がますます発展することを願ってます。